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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

主人の博労の佐治平は、梶子の見幕に驚いて、いよいよ吃りあわてるのであった。

「民弥さん!」

と梶子は叫んだ。

「どうしましょう? どうしましょう?」

魚屋助右衛門の隠した財宝の、所在を記した地図と文書とを、蔵したところの人形は、梶子にとっては財宝そのもの! そんなようにまで思われるのであった。

それを三十郎に奪われたのである。

財宝そのものを三十郎によって、奪われたようにさえ思われた。

「まだ遠くへは行きますまい。叶わぬまでも追っかけて、……是が非であろうと探し出し、三十郎を討ってとり、菊女殿を助け、人形を取り戻し……取り戻さねばなりませぬ! 梶子殿、いざご一緒に!」

云うより早く庭に飛び出し、民弥は馬に跨った。

民弥からいえば魚屋の財宝、そんなものは二の次であった。宥免状こそ大切であった。それを蔵した人形は、どうあろうと取り返さなければならなかった。

それにもう一つ三十郎は、不倶戴天の親の敵であった。討って取らなければならなかった。

菊女は同志の一人である。

これとてどうしても助けなければならない。

(それにしてもどうして菊女殿には、三十郎などに捕えられて?)