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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

てその隠し所を調べるのが当然でありますからな。……拙者そこで調べましたので」

と云って来て三十郎は、例のみだらの眼づかいで、菊女をジワリジワリと眺めた。

「拙者にとってはあの宥免状は、大切でもなければ必要でもござらぬ。で、あなたがご入用なら、喜んで差し上げるでござりましょうよ」

またここでいやらしいみだらの眼で、ジワリジワリと三十郎は菊女を見た。

「といってどうも只ではのう」

またいやらしくジワリジワリと見、

「水心あれば魚心で……」

膝を菊女の方へ寄せて行き、

「いかがでござるな菊女殿」

云い云い菊女の手を握った。

「大概おわかりでござりましょうよ」

菊女の体をジリジリと引き寄せ、

「拙者がそなたに恋していること、とうにそなたも知っている筈。……そこで水心に魚心……」

グッと片手で肩を抱き、

「うんと云われたなら宥免状はすぐにそなたの物になる。……が、厭じゃと仰せられたら、拙者宥免状を引き裂きますぞ!」

頬を菊女へ寄せて行った。

菊女はすっかり当惑した。

宥免状は是非とも欲しい。といってこのような男などに、何んで躯をまかされよう!

が、没義道に断ったならば、傍若無人のこの男は、本当に宥免状を破るかもしれない!