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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

船尾や船首にとぐろを巻いていた、船夫どもは二人を見送ったが、

「また新婚でお出かけだ」

「俺らも上村へでも出かけて行こうぞ」

「そうだ、そこで一杯やろう」

揃って船夫どもも陸へ上がった。

鵜の丸兵庫と五十嵐右内とは、林を分けて「お蔵」の方へ、話しながら歩いていた。

関口勘之丞の注進により、明暦義党の軍用金を隠した、「お蔵」と俗に呼ばれている岩山の、洞窟の附近に多数の男が、酒など飲んで屯ろしていたという。

ではどうしてもその人間どもの素姓を、至急調べる必要があり、かつ追い払う必要があると、こう思って二人は出かけて来たのであった。

「お蔵と云われているその岩上には、魚屋の宝の伝説以外に、まだまだ伝説があるのでござるよ」

そう右内は微笑しながら云った。

「どんな伝説でござるかな?」

兵庫は面白そうに耳を傾けた。

「八幡船が掠奪して来た財宝、三韓から送って来た貢物の一部が、隠されてあるという伝説で」

「やれやれ」

と兵庫は苦笑して云った。

「ではそのお蔵には金銀財宝が、唸っているという次第でござるな」

「さようさよう」

と右内も笑ったが、

「これは単なる伝説ではなく、確実にあった事件でござるが、かつて松平伊豆守が、この島を重大な目的の下に、ひそかに踏査いたしましたが、その際お蔵をも調べましたそうで」