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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「接近して鬨をつくりましたところ、それまではどこにおりましたものか、姿が見えませんでした敵の勢が、十二、三人ばかり現われまして、走り廻ったと思う間もなく、突然地雷爆発いたし、味方おおよそ十人あまり、生死は知らず吹き飛ばされ……」
「ふうむ」
と源兵衛は渋面を作った。
「で、逃げて参られたので?」
「…………」
この時霜降小平の勢が、算を乱して逃げ帰って来た。
「加藤氏、呆れてござる!」
と、霜降小平が息を切らして云った。
「彼らの背後へ廻ろうと存じて、小丘を一つ越しましたところ、小丘の上より彼奴らの一隊、突然姿をあらわして、弓鉄砲を射かけましてな、さんざんに味方をうちすくめましたので。……当方でも応戦はいたしましたが、彼奴ら地勢にくわしいと見え、隠れてはあらわれ、現われては隠れ、みるみるうちに十五、六人、我ら負傷させられてござる。……彼奴らの方が我らより先に、この島へ上陸いたしたためか、万事に様子がくわしいようで。……これは迂濶には攻められませぬぞ」
「残念ではござるが御意の通りじゃ」
と加藤源兵衛も心外らしく云った。
「どっちみちしばらく様子を見ましょう」
――で、紀州勢はためらっていた。