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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

――あのまま焚火が燃えているのだからな)

小平たちはこんなように思った。

そうしてこのことは小平たちの心を、ノビノビさせ安心させた。

(自分たちばかりが不面目ではなかった)

と、こんなように思ったからである。

はたして加藤源兵衛たちは、焚火を囲んで悄然としていた。

「霜降氏ではござらぬか」

近よって来た一団を認め、源兵衛たちは驚いて云った。

「加藤氏一大事でござるぞ」

と、小平は焚火へ近よりながら云った。

「明暦義党の奴ばらに、われらが乗船二隻ながら、奪い取られてしまいましたぞ」

「何んということだ!」

「一大事だ!」

源兵衛の部下たちは騒ぎ出した。

「それにいたしても不思議千万」

と、源兵衛は合点がいかないように云った。

「貴殿とお別れいたしてすぐに、我ら例の小屋を攻撃いたそうと、小屋の近くまで参りましたところ、何んたる大胆義党の奴ら、鼻歌まじりに鋸や斧で、小屋の建築をいたしおりましたので……」

「ナニ、あそこにも義党の輩が?」

「そうして海上にも義党の輩が?」

「では義党の連中は、われらが想像いたしたよりも、夥しく多勢と見えますのう」

この時分から霽れていた空が、シケ模様となって嵐が吹き出し、雨さえ少しずつ降って来たが、俄然暴風に暴雨とが、林を揺すり枝葉を鳴らし、凄じい光景で下ろして来た。