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ねこののみとりぶし

猫の蚤とり武士

国枝 史郎

「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页

青空文庫

そいつに乗り上げたらおしまいだ。……見ればあの船はこの辺の海には、どうやら一向不案内と見え、ただウロウロと漂っている。……気の毒だ助けてやれ!」

そういう嘉門もこの辺の海の、案内などには不通なのであったが、島の漁師がこっちにはいたので、そういうことはわかるのであった。

その嘉門は林の奥の、例の小屋がけの陣地から、味方を繰引きにここまで引かせ、一部は上村の漁師の家へ、頼み込んで分宿させ、一部を自分たちの乗って来た船へ、乗り込ませて形勢を見ることにし、一方半九郎と主膳とへ、青塚郷民の屈竟なのをつけて、紀州藩士の乗って来た船を、海に求めさせて奪わせたのであった。

「さああの船の水先案内をしてやれ!」

とまた嘉門は怒鳴り出した。

「さあ上村の漁師さん達、ご迷惑でしょうが行っておくんなさい。……私達もご一緒に参りますから!」

「助けに行こう!」

「水先案内をしてやれ!」

と、漁師たちは異口同音に応じて、数隻の小船へ篝を焼き、それへ勇躍して乗り込んだ。

嘉門もその他の義党の同志も、幾人となく乗り込んだ。

「それ漕ぎ出せ!」

「それやいそれやい!」

怒濤をしのぎ暴風雨を突っ切り、勇敢に小船は出て行った。