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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
後から追って来る足音や、叫ぶ声や呼ぶ声が聞こえて来たが、やがてそれも遠ざかった。
三十郎はメチャメチャに走った。
どこへ出ようとどうなろうと、もうそんなことは問題でなかった。
兵庫や民弥に討たれるよりも、洞窟の中で道に迷い、永遠に外へ出られずに、餓死した方がまだよいと思って、走りに走るのであった。
と、彼の悪運が、まだこの時には尽きなかったものと見え、遙かの行手にほの赤く、火の光が見えて来た。
松明の光ではなさそうであった。
(しめた! 有難い! 外に出られる!)
驚喜して三十郎はひた走った。
とうとう三十郎は洞外へ出た。
見れば何んたる光景ぞ!
林をゆすり森を叩き、戸外は暴風暴雨であったが、百人あまりの武士の群が、洞窟の入口に屯ろして、篝火を焚いているではないか。しかも何んと意外も意外、霜降小平や加藤源兵衛らの、それは紀州藩士の群であった。
三十郎はギョッとした。
が、奸智にたけた彼は、躊躇せずに走り寄ると、
「お珍らしや加藤氏、霜降氏、拙者は刃三十郎でござる! 青塚郷を襲いました際に、お味方いたした三十郎でござる! ……かかる処でお目にかかるとは! ……おお、そうそう貴殿方に対し、拙者お土産を持って参ってござる! この女じゃこの女じゃ! ……もちろんご記憶でござりましょうな、明暦義党の同志の一人の、菊