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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
民弥は刀ふりかぶり、尚三十郎を討とう討とうと、ジリジリ詰め隙をうかがっていたが、この時スルスルと背後へさがると、
「大義親を滅するといえば……」
と、悲壮の声をまず上げた。
「許されがたき敵ではござるが……」
「おお一時許されるか!」
「何より宥免状を手に入れて……」
「同志多数の生命を、では、お助けくださるか!」
「同志として採るべき行為でござれば……」
「感謝! 松浦氏、感謝いたすぞ!」
「三十郎オーッ」
と吼えるような声で、民弥は三十郎を睨みながら呼んだ。
「汝の姦策にみすみす乗り、一時は命助けるといえども、今度逢ったらその時こそ、この世の暇とらせるぞ! いわば命を預け置くというもの! さよう心得宥免状を渡し、行け! とくとく! 逃げて行けエーッ」
「多謝! アッハッハッ、それでこそ義士!」
と、命助けられる嬉しさに、雀躍りしながら三十郎は云った。
「義士とも義士ともそれでこそ義士! 親の敵というやつは所詮一人の敵でござるからな、大勢の同志の命とは、とうてい比較になりませぬよ。……そこでそっちを断念し、こっちへ決心されたことは義士! お見上げ申した、お見上げ申した。