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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「それは何故でござりましょう?」
「あの島が要害の地じゃによって」
「…………」
「四国、九州の諸豪方が、いざ事ありという時には、瀬戸内海を水軍で上る。……その際あの島に防備があったら、それを食い止めることが出来る」
「そんなものでございましょうかねえ」
「これは五十嵐右内氏に、あの島でわしが逢った時、右内氏より聞いた話じゃが、そういう点へ伊豆守様には、とうにお心がつかれていて、ひそかにご自身あの島へ渡られ、お調べになったということで。……あの洞窟へもおはいりになったそうじゃ。……そのあげく伊豆守様は仰せられたそうじゃ、『幕府の手でこの島へ防備を施しては、諸大名の心を刺戟して、かえって結果は悪かろう。――ご親藩でのご英雄、紀州様のお手などでしていただいたら、一番よいように思われる。……それには親しく紀州様へ、あの島へ渡っていただきたいものだ』と」
「そこで伊豆守様には廻り廻って、それを紀州様へ実行させようと、人形の中へあのようなものを――恋文になぞらえた××島の記録を、あんな具合におかくしになり、それを簾子様へ送られて、簾子様から紀州様へ、それを伝えようとなさいましたのね。