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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
いや二十挺のその駕籠から離れて、もう二挺の駕籠が置いてあり、その横に姉小路卿と梶子とがいた。
そうして二十挺の駕籠の側には、覆面をした武士が一人ずつ、二人の駕籠舁きを左右にして、黙然として立っていた。
で、この小広い林の中には、四十四人の駕籠舁きと、二十人の覆面の武士と、姉小路卿と、梶子とが、不浄門の方を眺めながら、静まり返っているのであった。
やがて不浄門の方角から、提灯の火が近寄って来た。
菰包みが二人の非人によって担がれ、それに同心らしい武士が付いて、この林の中へはいって来た。
「明暦義党の正木右馬介の死骸、親戚の者に引き渡す」
と、その同心が物々しく云った。
と、覆面をした一人の武士が、進み出て一揖し、
「受け取りましてござります」
と云った。
菰包みを地へ置いて、非人と同心とは立ち去った。
菰包みの中から現われたのは、もちろん生きている正木右馬介であった。
駕籠の中へ入れられた。
と、ひきつづいて続々と、不浄門から義党の死骸が、同じような形式で運ばれて来て、みんなここで生きた人間になって、駕籠の中へ入れられた。
「梶子殿」
と姉小路卿は云った。