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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
……もう駄目だよ、皆様の前で、今度こそ立派に討たれてしまいな!」
と、云うのに続いて姉小路卿が、
「松浦氏、姉小路じゃ! ……紀州家に捕われた義党の人々も、幸い許されてここにござる。……我ら一同拝見いたす、立派に敵をお討ちなされ! ……義党の方々遠慮はいらない、駕籠を開けてご見物なされ!」
声に応じて駕籠の戸があき、二十人の明暦義党の徒が、顔を差し出し民弥の方を眺めた。
警護して来た紀州藩士は、忽ち三十郎を遁がさぬように、遠巻きにひしひしととりかこんだ。
民弥の歓喜に引きかえて、今は三十郎は絶体絶命、見れば非人も三人の破落戸も、いつの間に逃げたか姿はなかった。
「ムーッ」
と切歯するばかりであった。
その三十郎の気萎え根疲れた、構えの隙を眼ざとく目付け、民弥は飛燕さながらに飛び込み、無双の悪剣の使い手であり、剣鬼のような三十郎の、右肩を胸まで割りつけた。
「ワーッ」
と三十郎は地に仆れた。
「お見事! とどめを!」
と兵庫が叫んだ。
民弥は三十郎へのしかかり、こめかみへブッツリ止どめを刺した。
××島とは?
××島における二派の人々は――紀州藩士の一団と、義党と青塚郷民との組は、対峙したままで静まっていた。