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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
「夕刊大阪新聞」1934(昭和9)年8月7日~12月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,496 字 · 368 页
「…………」
「云ってみりゃアお抱え人さ!」
「…………」
「家来だよ! そうともさ!」
「…………」
「それを何んだい変にネチネチと、恋したの惚れたの好きだのと! ……そのあげくには嚇しかけ、誰かを真っ二つにするとかしないとか! ……嘗めちゃアいけないんだ! ね、嘗めちゃア!」
三十郎の眼はギロリと光った。
「附け人、用心棒、まさにさよう。……が、拙者は一面において、隠密役にもござります。……さよう、あなた様に対する目附け役で」
「そうともさ、知っているよ」
梶子は負けずに云い返した。
「京都所司代の厭な爺さんが、松平伊豆守様への忠義顔に、お前さんという人へ隠れ扶持をくれて、あたしの所へ附け人としてよこし、伊豆守様へはもっともらしく『梶子と申す女隠密、女のことゆえ恋などに眼くらみ、お役目おろそかに致すかもしれず、かかる場合には注意されたく、それに女のことでござれば、一人腕利きの男を附けて、介添えいたす必要もあり、刃三十郎と申す男を、附け添わせましてござります』などと、申し入れたというじゃアないか。……はなからあたしにゃア解っていたのさ」
「でわたくしはあなた様の、目附け役にござります」