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しろうまだけ

白馬岳

木暮 理太郎

「教材講座」1927(昭和2)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,746 字 · 28 页

青空文庫

次で鶯が囀る。巧婦鳥なども近くの石の上で、不意に美しい声で鳴き出すこともある。鳴き声がゼニトリゼニトリと聞えるので、登山者の間には銭鳥で通っている目細や、淋しい声でヒヨーヒヨーと鳴く鷽なども聞かれる。朝の雪渓は全く一しきり小鳥の合唱所のような観がある。

雪渓に限らず、岩でも斜面でもそうであるが、下りは登りよりも熟練を要するもので、登りには何とも思わなかったものが下りには恐ろしくて足が出せない、というようなことは屡々経験する所である。初めて雪渓を登った人が下る時に、茣蓙を敷いて其上に腰掛けて滑降した所、余り勢がよいので恐ろしくなり、途中で止めようとしたが力及ばず、終に顛倒して怪我をした例は沢山ある。白馬の雪渓は半ば以下は勾配が緩いので滑降も危険はないが、上部は可なり急であるから、初めての登山者は独りで滑降することは多少の危険が伴う。木の枝を橇の代用とし、之に荷物と自分を載せ、綱を付けて人夫に曳き下らせるとよい。尤もスキーの出来る人ならば滑降も自由であるが、夫には勾配が少し緩いであろう。兎に角雪渓の滑降はうまく行けば愉快なものに相違ない。

葱平は葱の生ずる斜面という程の名であろう。