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しろうまだけ
白馬岳
木暮 理太郎
「教材講座」1927(昭和2)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,746 字 · 28 页
お花畑
針木岳の上には御岳と乗鞍岳とが重り合って顔を出す。槍穂高の連峰は鋭い峰角から銀箭を射出すように雪が輝く。近い鑓ヶ岳の山頂から西に曳いたゆるやかな斜線は、天翔ける鳥のように空を截って黒部の谷に隠れる。其手前は杓子岳で、雄大な展望観はここに終る。
よく晴れた大気の澄んだ日であれば、富士も南アルプスも杓子岳の左に遠く望まれるが、そういう日は夏は少ないのである。北は雪倉岳と朝日岳の外は目を惹くものもない。東北から東にかけては、山また山が目路の果まで続いているが、纔に妙高火山群と戸隠の連峰とが識別されるのみである、独り浅間山のみは東南に離れて悠然と烟を吐いている。眺望の序に日の出や雲の海に就て記す可きであるが、白馬岳の特色という訳ではないから、茲には略することにする。
お花畑
白馬岳に産する植物は三百種の上に出るが、専門家の目から見て如何に珍品奇草でも、美しい花をつける種類でなければ、素人は興味を惹かれぬ、花さえ綺麗で量が多ければ其処はお花畑である。姫梅鉢草、高根毛莨、雲間毛莨などは、稀品であっても一向に見栄えがしない。
白馬岳のお花畑で、美しい花の咲く多くの種類が集っている所は、大雪渓を登り詰めた所の葱平であろう。