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しろうまだけ

白馬岳

木暮 理太郎

「教材講座」1927(昭和2)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,746 字 · 28 页

青空文庫

ここにも白馬浅葱や白山小桜など目を惹く植物も少なくないが、注意す可きは其等の植物よりも大残雪の附近の岩面に印された氷河の擦痕と、あたりに散乱している漂石とである、この氷河遺跡は日本に於て最初に発見されたもので、発見者は山崎直方博士である。

今こそ白馬岳には氷河は見られないけれども、幾万年かの前の氷河時代には、気候が今よりも寒く、日本アルプスにも永河が生じていたのである。高山の頂上附近に盃を割ったような半円形の窪がある、其処が氷河の生長していた場所で、カールと呼ばれている。白馬岳のものは氷河が溶け去った後の風化作用が甚しかったものか、殆ど其原形は認められない。然しながら略ぼ完全に近いカールは、北アルプスは勿論南アルプスにも保存されている。北アルプスでは立山、薬師岳及び黒岳の東側に於ける三個乃至四個のカール、針木岳の厩窪等は尤も顕著なものであり、南アルプスでは仙丈岳の頂上に二個、悪沢岳の西の尾根上に二個あって、共に標式的のものである。これらのカールの在る位置は平均二千五百米乃至二千六百米であるという。其外有名な上河内(上高地)の渓谷に入れば、氷河流に依って作られたことを証明された珍しいU字状の谷が見られる。