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しろうまだけ
白馬岳
木暮 理太郎
「教材講座」1927(昭和2)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,746 字 · 28 页
あるのみである。
然し眺望の広闊なることは驚嘆に値する。西には近く旭岳が聳え、山頂の東側で中央部に特立した巨岩が頭を突き出している。其北には遠く黒部の三角洲と日本海とが見える。漁船などは木の葉を散らしたようだ。旭岳の南には毛勝連山が三峰を擡げ、孰れも長い雪渓を懸けている。この二山の間からは富山平原が望まれ、夜は富山市の電灯が蛍の飛び交うに似ている。次で遠い桔梗色の空にふわりと青黛を浮べているのは、加賀の白山である。劒岳は此方面から見ると素晴らしい金字塔を押し立て、別山、真砂岳から富士ノ折立、雄山と続いた立山連峰の壮観は、他の追従を許さない。薬師の大岳は半ば以上立山に隠れる。黒部五郎岳(中俣岳)、赤牛岳、黒岳、鷲羽岳などいう黒部川上流の大立物は、蒼溟の大波が捲き起って将に崩れようとする形であるが、一波の尖りにも厳乎たる特性があって力強く存在を宣している。野口五郎岳、針木岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳などの白馬山脈の山々は、長い山脈を縦に望むせいか、峰頭は痩せて尖り、山体は横にふくれ、それを腰のあたりでグイと引き締めてから一気に谷底まで引き下ろしている、何という力の均衡のとれた線であろう。