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しろうまだけ
白馬岳
木暮 理太郎
「教材講座」1927(昭和2)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,746 字 · 28 页
砂礫地に一、二尺の間隔を置いて、規則正しく列を成して生えている所を見ると、まるで栽培しているのではないかと疑わしめる。要するに白馬岳には、五色ヶ原のように一の花が大群落をなしている場所は少ないが、其代り至る所に美しい花や珍らしい草が見られる。即ち頂上全体がお花畑ということになるのである。
葱平附近から頂上に至る偃松の中には、元は雷鳥が多かったが、今は容易に見られなくなった。この鳥は晴天の日には偃松の中に潜み、霧の日などに外へ出て遊ぶ癖がある。鷲や鷹などを恐れる為であろう。冬になると尾羽の先端が黒いのみで全身白色に変ずる。追われても余り飛ばず、ちょろちょろ逃げ廻っている為に、石を投げつけたり、杖で打ったりして捕ることが出来た。殊に雛を連れた雌は、子を案じて逃げもやらずにいるので無造作に叩き殺された。近年は余り登山者にいじめられるので鳥も利口になった。其上保護鳥として捕獲を禁止された。
後鳥羽天皇の
白山の松のこかげにかくろひて
やすらにすめるらいの鳥かな
という有名な御製は、七百五十年前の歌であるが、其頃加賀の白山に登った人から、高山に住む珍らしい鳥の噂が宮中に伝わり、終に至尊の御耳に達して御製となったものであろう。