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わたしのりれきしょ

私の履歴書

井上 貞治郎

――放浪の末、段ボールを思いつく

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页

青空文庫

こうした間にも芸者の出入りは続き、むしろこの結婚生活で私の茶屋遊びは拍車をかけられた形であった。

北の芸者小勝の親から『井上さんは将来見込みのある人だから、身代金は手形でもかまわない。娘をもらってほしい』という奇妙な申し出を受けたのもこのころである。

それからだいぶたって、小楽という若い芸者にもなじんだ。しかし一時は石炭界で「切れ者」の評判をとった栄吉も、放らつな生活がたたって落目だった。女に私を連れてどこかへかくまってくれ、といわれ、やけ気分も手伝って、別にほれたわけでもないのに、かけ落ちする気になっていた。女のちりめんの長じゅばんを持出し、知合いの清津湯にかくまったが、たった一週間でみつかってしまった。たたき売った長じゅばんから足がついたのである。私は婦女ゆうかい罪だとおどかされ、小楽の一週間分の花代として二十七円あまりも巻上げられ、それでも足らぬので下げていた銀時計まで持っていかれた。分別のない青年のうぬぼれ心には、当然のお返しだったのである。

一方商売の方はいよいよいけなくなっていた。足が元手の稼業なので、人力車の代金がかさみ、この支払いが苦の種になった。