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かがくブームへのくげん

科学ブームへの苦言

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,269 字 · 24 页

青空文庫

きたるべき原子力時代にそなえて、日本でも、早く原子力発電に着手しなければならない。それには動力炉を外国から輸入するより他に、今のところ道がない。という見解が通って、政府は、英国及び米国から、違った型のものを、それぞれ一基ずつ輸入することに決めた。ところが、此処に問題が一つあって、それには輸入先の国と、動力協定を結ばなければならない。

それでまず問題になったのは、米国との動力協定である。米国の動力炉は、濃縮ウランを使うので、これは電力を出させたあとの副産物として、プルトニウムが相当量出来る。このプルトニウムは、原子爆弾の原料になるものである。

問題は、このプルトニウムであって、米国は、濃縮ウランを輸出する条件として、出来たプルトニウムは、日本で平和利用に使う分だけを除いて、残部は米国へ売り渡すという協定を結ぶことになっている。これは米国としては、無理もない話である。せっかく苦心して研究をし、厖大な国費を使ってつくった濃縮ウランを、外国へ輸出して、先方で原子爆弾をつくられたり、またはソ連や中共へ再輸出されては困るわけである。

日本の場合は、自分で原爆をつくる意志はないし、こっそりソ連へ密輸出しなければならない義理もないから、出来たプルトニウムを、アメリカが買い戻す点に、反対する理由はない。