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かがくブームへのくげん

科学ブームへの苦言

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,269 字 · 24 页

青空文庫

という記事とが、同じ新聞に並んで出るのは、どうも矛盾している。内容の当否は、研究者でないとわからないが、二つの事柄が矛盾しているか否かは、内容を知らなくてもわかる。

ところで問題は、こういう奇妙な現象が、日本のジャーナリズムの中に、どうして起こっているかというに、それは原爆問題が、その背景にあるからであろう。原爆が人道上の罪悪であり、多量の放射能が人体に有害であることには、誰も異存がない。放射能の害を、できるだけ強く国民に印象づけることによって、幾分でも原爆戦争阻止に役立てればよいという考えが、識域下にあるためではないかと思う。意図がよければ、少しくらい不充分な学説でも大々的にとり上げた方がよいのかもしれない。しかしそれは政治としての見方である。科学にとっては、それは邪道である。

不充分と言ったのは、間違っているというのとは違う。とにかく最近まで有益と言っていたのを、今度は有害と言うには、前の学説の何処が違っていたかということを、まず指摘して、それから新しい学説を提供する形にしなければ、学説として不充分であるという意味である。これならば、広義の論理学に属する話で、専門外の者にも言えることである。