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かがくブームへのくげん
科学ブームへの苦言
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,269 字 · 24 页
動力炉をいくつ造るよりも、この方が、安い電気が多量に得られる。原子力発電は、その次の問題である。原子力発電もよいが、どうも孔のあいたバケツに、遠くから、筧で水を引いてくるような恰好である。まずバケツの孔を塞ぎ、手近な井戸の水を汲み込むことが、先決問題である。
南極ブーム、人工衛星ブーム、原子力発電ブーム、オートメーション・ブームと、猫の眼のように変わる、近年の日本の科学ブームは、どうも足が地についていない感じがする。そしてこのブームの流行の激しい変化には、ジャーナリズムが、一役買っているような気がする。科学者は、そんなブームなどに超然として、自分の仕事に没頭していればよいわけであるが、現実には、やはりその方に引きずられ易い。
少なくとも、心理的には、影響を受ける。第二次的のことであるが、ブームの波に乗っていれば、研究費の予算がとれるというようなこともある。
しかし何といっても、日本の国情に即した、もっと地味な仕事の方が、ずっと大切である。ジャーナリズムが、そういう方向に、じっくりした科学ブームを起こさせるように、協力して欲しいものである。(昭和三十四年四月)