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かがくブームへのくげん

科学ブームへの苦言

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,269 字 · 24 页

青空文庫

もっともこれは動力炉のことであって、実験炉の方は、話は別である。これは大いに輸入して、研究を進め、この方面の専門家を養成して、きたるべき原子動力時代にそなうべきである。

電力需給の何年計画とやらで、五年後には五十万キロとか、百万キロとか足りなくなる、日本でも原子力発電を云々というようなことが、いつかの新聞に出ていた。電力が足りないのなら、水資源の利用と、火力発電の熱効率を上げる方が、先決問題である。日本の水力は、水を非常に粗末に扱っているので、合理化をすれば、現在の倍くらいまで出せると、専門家は言っている。電気を起こしても、水は無くならないのであるから、灌漑用水、工業用水、飲料水などの諸問題の解決にも、水資源の総合開発は重大事である。東京地域の工業用水、飲料水の不足は、目前に迫っている。

石炭が足りないと言っていながら、現在の無駄な石炭の焚き方には、案外無関心である。日本の火力発電の熱効率は、平均二〇パーセントを一寸出るくらいであろう。米国では、四〇パーセントが常識になりつつある。火力発電設備の近代化をしただけでも、現在と同じ量の石炭を焚いて、電気は二倍出るのである。