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ちくはくき

竹柏記

山本 周五郎

「労働文化」労働文化社、1951(昭和26)年10月~1952(昭和27)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 页

青空文庫

「つまり、私と一緒になれば、杉乃が不幸なめをみる、ということですか」

「現に一つ、此処でその証明をしている、本気でそうするつもりなら、こういう男たちを使い、こんなふうに人を威さなくとも、ほかにいくらでも方法があった筈だ」

「毒草の種子を蒔けば毒草が生えるものさ」

「それはそちらの選んだ譬えで、おれの知ったことではない、おれは毒草の種子など決して蒔きはしなかった」

孝之助は膝の上で、扇子を強く握りしめ、相手の眼をひたと瞶めながら、云った。

「岡村八束には、宰相の質がある、という評があった、いまでもある。おそらく自分でも知っているだろう、善かれ悪かれ、世評などというものは無根拠だし、責任のあるものではない、おれはそのままには信じないが、しかし、岡村にそういう評のあることは事実だし、それは人々の信頼が、どれほどか岡村に集まっている、どれほどかの人が、岡村の将来に期待をかけている、という証拠だと思う、そうではないだろうか」

「岡村の旦那、問答はたくさんだ」

木屋徳が舌打ちをして云った。

「埒のあかねえ理屈はやめにして、肝心の話の括りをつけたらいいでしょう、待たせてある酒が不味くなっちめえますぜ」