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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页

青空文庫

「女中のお駒さんが少し離れて参りました。奈々子さんが、それにお茶を頼んだので、女中さんは部屋の入口から直ぐ引っ返して階段を降りましたが」

美保子の話は思いの外ハキハキして居ります。一たん出血のために、蒼白くなった顔が、さすがに緊張に上気して、ポーッと血色を回復したのが、たまらない可愛らしさです。

「で、部屋の中には?」

「奈々子さんが先に入って、スイッチを捻りましたが、電灯が点かなかったので、後から私も入って、手さぐりで近寄ると、いきなり真っ暗な中から飛出して――」

「――――」

その時の恐ろしさを思い出したらしく、美保子は暫く言葉を切って、息を休めました。

「――私は胸にひどい痛みを覚えて、フラフラと倒れてしまいました。気が遠くなったのです」

「相手の人相はわからなかったんですか」

「真っ暗だったんです」

「で、その真っ暗な中で、よく犯人が奈々子さんを窓から連れ出したということがわかりましたね」

花房一郎はさすがに急所急所を押して行きます。

「でも外に逃げ道は無かった筈です、私は入口に倒れて居ましたし」

「その入口の扉を誰が何時締めたのかわかりませんか」

「多分――その悪者が締めたんでしょう」