轻松读懂日语经典作品
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わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页
これは虎井満十でした。
「月給前借術とか、弁当屋口説き落し術なんてえのは、芸術のうちに入らんかね」
足の勇は潤滑油が利いて、すっかり舌が軽くなって居ります。
「ところで、話はもう一度元に還るが、千種君は本当に品行方正かい、――東京ポストの社会部長たるものが」
花房一郎はそればかり気にして居ります。
「恋人があるのだよ、警視庁の探索も其処までは届かないのか」
「恋人?」
「驚くなよ、花房探偵、若い男が恋人を持ったところで、警視庁のブラック・リストに載せるほどの事件じゃない」
足の勇は泰然とした態度です。
「千種君はもう若くないぜ、それにしても相手は誰だ、芸者か女給か」
「いやになるぜ、千種十次郎は紳士で人格者で清教徒だと言ってるじゃないか、その恋人が白粉臭い雌であってたまるものか」
「まア、勘弁しなよ早坂君、ツい岡っ引根性が出たんだ」
「本人がそう言うんだから、花房探偵憎気が無いよ、――斯うなると兄貴の名誉のために、神聖なる恋人の名前は発表しなきゃなるまいな、――驚くなよ」
「驚くものか、小野の小町とでも、ジュリエットとでも言って見ろ」
「そんな嫌なんじゃない、何を隠そう、千種十次郎の恋人というのは、熊谷合名の社員潮田春樹の妹で、美保子さんだよ、――島崎藤村の詩に詠まれたような、純情可憐な処女だ」