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うつくしいにほんのれきし

美しい日本の歴史

吉川 英治

「週刊文春」1959(昭和34)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,561 字 · 37 页

青空文庫

『蜂は小虫だが、蜂には人間にもない勤勉と仁智の心がある』

などと言って人々を煙に巻いていた。のみならず、蜂の一匹一匹に、何丸だの何助のと名をつけて、何か気にくわぬ横着者でもあると、

『何丸、誰を刺して来い』と、蜂に命じる。

また、彼が仕出のときには、牛車のまわりを蜂が金色の後光になって飛び巡って行く。彼が『帰れ』といえば帰り『止まれ』といえば車の蓋や廂に止まった。時の人々は、なんとも不思議な器用人も居るものであると、宗輔のことを“蜂飼い大臣”と綽名したということである。

その宗輔は、堀川帝の朝に仕え「管絃譜」の著者としても聞えていたし、また「春鶯囀の中将」という別名もあったほどだから、音楽家としてもよほどな人であったろう。だが、蜂が音楽を解すとは聞いていない。彼の秘密の技術は何にあったものだろうか。

嘘か本当か。ここまでは他愛ない話だからどっちでもいい。私がついおかしくなったのは、この自分に、もしそんな芸当が出来たらおもしろいなと空想してみたからだった。さしずめ私も蜂にいろんな名をつけて、赤坂の家の窓から『……何丸、岸を刺して来い』とやるだろうし、時には批評家、時には国税庁の人、時にはまた、この「週刊文春」