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はなのきむらとぬすびとたち
花のき村と盗人たち
「花のき村と盗人たち」帝国教育会出版部、1943(昭和18)年9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,710 字 · 20 页
かくれんぼのつづきで、まだあの子供がどこかにかくれているかも知れないというので、盗人たちは、みみずの鳴いている辻堂の縁の下や柿の木の上や、物置の中や、いい匂いのする蜜柑の木のかげを探してみたのでした。人にきいてもみたのでした。
しかし、ついにあの子供は見あたりませんでした。百姓達は提燈に火を入れて来て、仔牛をてらして見たのですが、こんな仔牛はこの辺りでは見たことがないというのでした。
「かしら、こりゃ夜っぴて探してもむだらしい、もう止しましょう。」
と海老之丞がくたびれたように、道ばたの石に腰をおろしていいました。
「いや、どうしても探し出して、あの子供にかえしたいのだ。」
とかしらはききませんでした。
「もう、てだてがありませんよ。ただひとつ残っているてだては、村役人のところへ訴えることだが、かしらもまさかあそこへは行きたくないでしょう。」
と釜右ヱ門がいいました。村役人というのは、いまでいえば駐在巡査のようなものであります。
「うむ、そうか。」
とかしらは考えこみました。そしてしばらく仔牛の頭をなでていましたが、やがて、
「じゃ、そこへ行こう。」
といいました。