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おちばいき

落ち梅記

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,748 字 · 61 页

青空文庫

――あのままではだめだ、いちど悠くり話しあって、なんとか生活を変える方法をたててやらなければなるまい。

半三郎が帰ったあと、金之助はこう思っていろいろ方策を考えめぐらせた。そしてこれは自分ひとりでなく、親しい友達を呼んで、みんなの意見を聞いてやるほうがいいと思った。村松平馬は江戸詰になって去ったが、和泉や林はこっちにいる、かれらはすでに家を相続し、それぞれ役目に就いているので、平常あまり往来はなくなったが、むろんこういう事には相談にのって呉れる筈である。

――そうだ、なるべく早くそうするとしよう。

こう考えたその翌日であった。朝いつものように登城した父が、午を少しまわったころに躯の調子が悪いといって帰って来た。頭痛がするだけでたいしたことではないからと、寝床をとらせてすぐ横になったが、夕餉のときには起きだして、金之助といっしょに食膳に向った。熱でもあるように顔が赤く眼の色も冴えない、しかし気分はもう直ったと云った。

「御用繁多でお疲れになったのですね」

「そうだろうね、頭の痛いことなどは殆んど覚えないので、はじめはちょっと驚いたよ」

助左衛門はこう云って苦笑したが、そのとき持っていた箸が手から落ちた。