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おちばいき

落ち梅記

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1949(昭和24)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,748 字 · 61 页

青空文庫

六

康継の眼はするどく光り言葉つきも烈しい熱を帯びてきた。

六

金之助のおどろきは形容しようのないものだった。それが事実であるかどうか、どこまで信じていいかさえ見当がつかなかった。康継は寸刻も惜しむというようすで、――この悪弊をうち毀し、紊乱した藩政をたて直すのは当面に迫った問題である、その第一は汚職の老臣どもの譴責であるが、いままでのところ汚職の事実を明らかにする的確な証拠がない、つづめて云うとかれらが経営する商舗とかれら一味との関係をはっきり証拠だてる物がない。そこで機会をみて一挙にかれらを檻禁し、国許へ送って裁決にかける。だいたいそういう方法をとることになった、それについては気の毒であるが沢渡にも累が及ばざるを得ない。康継はこう云うのであった。

「父上も助左の功は重くみていらっしゃる、我が藩の今日あるは助左のちからにあずかるところが多い、そう仰せられたこともあった、おれもそのほうをゆくすえたのみの一人と思っていた、情においてはまことに忍びないが、政治の粛正のためにはどうしてもここで断然たる処置をとらねばならぬし、それにはそのほう父子に眼をつむって貰わなければならないのだ、康継ではない亀之助がたのむ、――金之助、これも奉公の一つと思って承知して呉れ」