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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

僕もまた黙っている。ただ芋を食ってお茶を呑んでくるだけである。それでも僕の気持は慰められている。

いつか夜風呂の帰りにお婆さんに行逢った。やはり風呂に行くところらしく、手拭をさげていた。

僕にはもう一軒行くところがある。

僕は最近ひとりの少女と知合いになった。彼女は駅の近くで「緑陰書房」という古本屋を経営している。マーケットの一隅にある小さい床店で、彼女は毎日その店へ、隣町にある自宅から自転車に乗って出張してくるのだ。

彼女は新制高校を卒業してから、上級の学校へも行かずまた勤めにも就かず、自ら択んでこの商売を始めた。父兄の勧めに由ったのではなく、彼女ひとりの見識にもとづいてしたわけで、はたちまえの少女の身としてはまず健気と云っていいだろう。「よくひとりで始める気になったね。」と僕が云ったら、彼女はべつに意気込んだ様子も見せず、「わたしはわがままだからお勤めには向かないわ。」と云った。

紫色の細いバンドで髪を押えているのが、化粧をしない生まじめな顔によく映って、それが彼女の場合は素朴な髪飾りのようにも見える。おそらく快楽好きな若者の目には器量よしには映るまい。