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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
生い立ちの記
思い出
思い出
私は数え年の二つのとき、父母に伴われて大阪へ行った。大正の始であった。
その頃、私の父は摂津大掾の弟子で、文楽座に出ていた。父は二つのとき失明した。脳膜炎を患ったためだという。父は十三四の頃初めて大阪へ行き、はじめ五世野沢吉兵衛の手解をうけ、その後当時越路太夫と云った摂津大掾のもとに弟子入りをした。祖父の姉で出戻の身を家に寄食していた人が、父に附添って行った。父は時々、学生の帰省するように、東京へ帰ってきては、また大阪へ出向いていたようである。その間に父は結婚して、兄と私が生れた。乳離れのしなかった私が連れられて行ったのは、父の最後の大阪行のときであった。
大阪のどこに私の一家が住んでいたのか、私は知らない。大阪の家には、父母と私と祖父の姉にあたる人(この人のことを、家ではひとつは祖母と区別するために、大阪おばあさんと呼んでいた)と、それから私の子守のしづやがいた。しづやも東京者で、私達と一緒に大阪へ行ったのである。東京の家には、祖父母と兄がいた。兄は私より二つ年上であった。
その頃、文楽座は御霊神社のそばにあった。私達が住んでいたのも、そこからそう遠いところではなかったであろう。