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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
」
「なんでも、歌舞伎見立の仮装行列を大掛りに催すって話だそうですよ。大文字屋の旦那がひどく乗気なんだそうです。」
「乗気はいいが、あの腰抜けじゃあ、行列には出られまい。」
当時の大文字屋の主人は神経痛で腰が立たず歩くことが出来なかった。
「それが御隠居さん、考えたものじゃありませんか。大文字屋さんの役だけはもう極まっているそうですが、なんだと思いますか? 鈴ヶ森の長兵衛なんですよ。」
「なるほど。駕籠で行くというわけか。腰抜けの考えそうなことだ。」
「相変らずお口が悪いですね。なんでしたら、御隠居さんも一役買ってお出になったら、いかがです?」
「馬鹿野郎。この年をして顔に白粉を塗れるか。」
祖父は見たり聞いたりすることは好きであったが、自分ではなに一つやらなかった。「お祖父さんは楽屋名人で江戸っ子の総元締のつもりでいるんだから。」と祖母がよく云い云いしたものだ。煙草はまるでやらず、酒は若い頃には無茶に飲んだこともあったようだが、五十を過ぎてからは殆ど盃を手にしなかった。
その夜帰りにお歯ぐろ溝に沿って歩いてきて一元楼の裏手に来たとき、祖父は思い出したように、「清、お前が落ちたのはここか?」