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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

ふだんはそれほどにも思わなかったが、口述などする時にはそれがわかった。私は胸をどきどきさせながら筆記した。居士は私がのべつインキ壺にペン尖を漬けるのに気づいて、

「どれ、見せてごらん。」

と私が差し出した原稿用紙をのぞいて、

「あまり力を入れて書くから、すぐインキがきれてしまうんだ。」

と云った。私は自分のやたらインキを滲ませている金釘流が恥ずかしくてならなかった。居士は自分でペンを執ってさらさら書き流した。

「ほら、こういう風に軽くペンを走らせればいいんだよ。」

小学生の時習字の時間などに、たまたま先生から手を取ってもらって教を受けることがある。先生の掌は大きくて暖くて、小さい生徒の胸は嬉しさと恥ずかしさで一ぱいになる。私はその時それに似た気持になった。居士からペンを渡されてまた筆記を続けたが、いくら気をつけても私のペンは軽く走らず、私の書く字はたっぷりインキを滲ませて、私は相変らずせわしくインキ壺にペン尖を突込まねばならなかった。

「今日はここまでにしておこう。」

と云って、居士は私の筆記に眼を通し、誤字を訂正し脱字を書き入れたりした。居士は「御苦労さん。