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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

橋の上の外燈のあかりに粉雪の舞うのが見えた。時々雪を被った電車が緩く橋の上を動いて通った。

「清さんはもう学校はお休み?」

「ああ。」

「今度級長になったんですって?」

「うん。」

「この間おばさん、家へいらしったわ。……甘酒、もっと飲みます?」

「もう沢山。」

私は内弁慶で外ではから意気地がなかった。高座姿のイエの美しさに私は鼻白んでばかりいた。その夜はイエが自分よりずっと大人に見えてしょうがなかった。

「おばさんが云ってらしてよ。清さんは大学校まで上げるって。清さんは大きくなったら、どういう人になるの?」

イエは凝っと私の眼を見つめた。私はあかくなりながら云った。

「僕はね、お医者さんになって、貧乏な人をただで病気を治してやるんだ。」

イエはまじめな顔でうなずいた。大学という言葉が子供の私の心を擽ったのだ。また私の医者になるということは母の望みでもあった。「いまにきっとえらい人になります。」イエの前では私も無心ではいられなかったのかも知れない。私はこのときイエの顔にはっきり支持者の期待を見た。

翌年あの大震災があった。私の一家は小さい弟を亡くした。震災を境にしてその後一家の上には何かと不幸が続いた。