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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

」

彼女は弟を押えつけて、

「降参か。」

「降参なんかするもんか。」

「よし。これでも降参しないか。」

彼女が腋の下をくすぐると、

「降参、降参。」

弟は悲鳴をあげた。彼女はこの弟を一番可愛がっていた。弟もまた彼女を慕っていた。

はじめておきぬが、彼女にこの奉公口を世話してくれた、羽村で材木商をしている人に連れられて、このアパートにお目見得にきたとき、材木屋のおじさんはおかみさんに彼女のことを頼んで、こう云った。

「気立のやさしい子だから、あまり叱らないでおくれ。」

そしておきぬの方を向いて、

「おかみさんがいいお婿さんを世話してくれるとさ。」

おきぬが顔を赤くしていると、おかみさんは、

「稼ぎ者の御亭主が見つかるといいがね。」

と云った。おかみさんはおきぬを見て、おやまあ、なんて不細工なんだろうと思ったのである。

おかみさんは口喧しいわりには、さっぱりした人で、使われる身としては気やすかった。おきぬとしては、はじめて他人の中に出たわけだが、それほど辛くはなかった。おかみさんもまた、すぐ彼女のことを、この子は安心できると思った。こちらが小言を云いすぎたと思ったようなときでも、おきぬにはへんに脹れるようなところがなかった。