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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

おきぬに対しては、嘉吉も前から親しみを感じていた。嘉吉の貧しさがおきぬの心に親しみを呼び起こしたように、おきぬが器量よしでないということは嘉吉にとっては少しもおきぬを侮る種にはならなかった。おきぬを見ると、嘉吉はいつも気持がなごむのを覚えた。行末のことを思って心細くなったようなときでも、なにか用事をしているおきぬの姿を見かけると、堪える気持になった。たとえば雑巾がけなどをしているおきぬの姿が、嘉吉の目には、この世に於ける人の営みの象徴のようにも映るのであった。なんによらず、おきぬのすることには見てくれがなかったから、それが人の心にふれたのであろう。それにまた、嘉吉自身がみえ張らない男であった。二人は互いにその身に着いた雰囲気に似通ったものを持っていた。嘉吉の病気は二人の間の親しみを深めた。

嘉吉ははじめおきぬを見たとき、わけもなく彼女のことを不倖な身の上の娘のように思った。たとえば母親が違うというような。その後、おきぬが貧しくとも愛情には不足のない家庭に生い立つことを知ったとき、嘉吉には自分の勝手な想像が可笑しく思われた。おきぬはおとなしいけれども明るい気性で、彼女には暗いかげは少しも見えなかったのだから。