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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
出入りの大工の家に寄って行くと云うおかみさんと別れて、おきぬは漬物屋に寄り、下宿人のための納豆と昆布の佃煮を買い、また果物屋で蜜柑を買った。既に扉の締っている銀行の建物の前に大道占いが出ていて、そこに四五人の人集りがしていた。見るともなしに覗くと、そこで手相を見てもらっているのは嘉吉であった。まあこの人ったら。嘉吉は掌を出して、薄笑いしながら占者の云うことを聞いていた。おきぬはそこに立止りかねて行き過ぎた。すこし行って振り返ってみると、人集りを離れてこちらへ歩いてくる嘉吉の姿が見えた。省線の踏切の処へくると、遮断機が下りていた。おきぬは遮断機の上るのを待ちながら、背後に近づいてくる嘉吉の気配ばかりが気にかかった。
遮断機が上っておきぬが歩き出したのと、嘉吉から呼びかけられたのは、殆ど同時であった。嘉吉はおきぬのすぐ真うしろに来ていた。踏切を渡り終ってから、二人は並んで歩いた。
「お使いかね。」
「ええ。」おきぬはうなずいて、「おかみさんと映画を見に行ったの。山田さんがいたの知っていたわ。」
「あ、そうかね。おかみさんは?」
「大工さんのとこに寄ったの。