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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页

青空文庫

出たら一日行って見ようと約束するように話した。自由な身になった時、その饅頭を懐に入れて、散歩をしたいものだと思った。

私達はよくこんな冗談を、大人のままごとみたいなことを云い合った。

「お早よう。今朝は納豆を買っといたぜ。」

「そうかい。そいつは有難てえな。朝はおつけに納豆がありゃあ、江戸っ子は文句は云わねえよ。」

「それに茄子の芥子漬でもあればな。」

「贅沢云うねえ。」

また。

「明日の休みには家へ寄ってくんねえ。なにもないが、いるかのみそ煮を御馳走するぜ。」

私はここで免業の日に一度初めて、いるかのみそ煮を食べたものだが、おいしいものだった。

また。大祭日には「教誨」で教誨師の話の後で、浪花節のレコードなどをかけて聴かしてくれた。また昼飯の後、大福餅をくれた。

「明日は一緒に浪花節でも聴きに行こう。」

「うん、帰りに大福でも食うか。」

そう云って私達は笑い合った。

私達は話をすることは絶対に禁じられていて、それは懲罰に価したが、看守の眼をかすめて、かなりおしゃべりを楽しむことが出来た。話し込んでいて、ふと顔をあげた時、看守の席から凝っとこちらを見ているその人の視線にふれ、思わず眼をふせたことが幾度かあった。