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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
神戸の市内電車の中で、私が車掌に向って、新川へ行くのだと云ったら、車掌は新川は遊廓のある方かと問い返した。私がK氏のいる処だと云ったら、そんならはじめからそう云えばいいと云った。神戸に一歩入ったら、K氏の名はいっぺんに通りのいいものになった。まもなく私達はK氏の著書でなじみになっている新川の貧民窟へ行った。イエス団の建物は皮肉にも酒屋の前にあった。案内を乞うと、私の方では名前も顔も知っているSという人が出てきた。Sさんの話によると、K氏はやはり、武庫郡のなんとか村の住居の方にいるのだった。Sさんは私に向い、ここで働きたい意志なのかと云った。私は口ごもり、K氏にあいたいとだけ云った。私は貧民窟に足をふみ入れてから、その辺にいる子供、と云っても、私と同年輩位になる少年の人相を見て少からず怖気づいていたので、Sさんの問いに対しては躊躇せずにはいられなかったのだ。Sさんは一寸腑に落ちないような表情をしたが、K氏あてに手紙を書いてくれ、お百姓さんに対しては私のために礼を述べてくれた。
私達はまた神戸から引返し、武庫郡のなんとか村へ行った。どうも先刻から、なんとか村とばかりで、読者に対してたいへん申訳ないのだが、なにしろ二十五年以上も前のはなしで、私はその村の名前をどうにも思い出せなく、調べればわかることだが、いま