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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
私は自分のなかにある勘のようなものに導かれて、ただあてずっぽうに歩いた。そのうち、私は自分の心が欲している処へ出た。往来のそこ、ここに女の影があった。私は一人の女のそばを行き過ぎ、しばらく行って引返した。女は私を見て、私の蝙蝠傘を執えた。私は女に促されるままに、その家に上った。私は着換をして、女の来るのを待った。女はなかなか姿を見せなかった。私は不安な気持になった。と、女が顔を見せ、「臨検です。」と云い、すぐ女の背後から刑事が部屋に入ってきた。刑事はさりげない口調で私にいろんな質問をし、それから私の所持金をしらべた。刑事は一寸警察まで同行してくれ、手間はとらせないからと云った。私は身支度をして刑事に従った。その家の戸口で、刑事は女をかえり見て、すぐ帰ってくるんだからねと私のことを云った。なにやら優しいものの云い方であった。警察へ行く道すがら、刑事は私を自分よりは前方に歩かせ、心配しなくともいい、なに一寸しらべるだけだからと、同じことをくりかえしくりかえし云った。
母はもうこの世に亡く、私は二十四歳になっていた。