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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
集金やのおばさんに云わせると、「吝嗇で図々しいんだから。」というわけだが、結局は困っているからである。たかが新聞代位と思うかも知れないが、そんなものではない。新聞を全然取らない家だってある。新聞を取らない家というものも、また殺風景なものである。私はいちどそういう家に勧誘に入って、吐胸を突かれたことがある。乳呑児を抱えたその家の主婦は、私の顔を見てなにも云わずに首を横にふった。私ははじめその主婦の表情がわからなかったので、いろいろ勧誘の言葉をならべたてたが、そのうちにはっと気づいた。私の饒舌に対して終始沈黙を守っている主婦の顔色には、意地悪なところも頑固なところもなく、ただ当惑と羞恥の表情しかなかった。その人の眼は始めから「新聞代を払えないから。」と訴えていたのである。伊右衛門の留守にお岩の住居に飛び込んだような思いがして、私はそこそこに引き上げてきたが、帰途しみじみとした気持を引き出された。私は一軒のお得意を獲得したよりも力づけられた。自分を意気地なしだと思わないわけにはいかなかった。「絶望するな。」私は自分にそう云いきかせた。
先輩は私に勧誘の手ほどきをしてくれた翌日、同系統の荒川の新店に予備として赴任して行った。