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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
六号、七号、八号の三区域に分れていた。配達は店では各自名前を呼ばれる代りに、受持っている区域の号数で呼ばれることもあった。「一号さん。」とか「三号さん。」とかいうように。私は「四号さん。」であった。四号という区域は竜泉寺町の一部と金杉下町の一部とから成っていた。一番こぢんまりしていた。区域の輪郭はだいたい直角三角形で、配達の順序は底辺の方から徐々に一郭ずつ配って行って、頂角のところで終るというやり方であった。私に区域を引き継いでくれた先輩の方法をそのまま蹈襲していたのである。配達の始まる地点は茶屋町通りの終るところで、ちょうど揚屋町の非常門の外にあたっていた。直角三角形で云えば、斜辺と底辺とが交るところである。そして底辺と交って直角を成す直線が吉原土手にあたっていて、配り終る頂角のところまでくると、所謂土手八丁も尽きるのである。そんな区域であった。
配り始めのところは殆んど軒なみY紙を取っていた。最初はパン屋で、この家の前にはポストが立っていて、葉書や切手の類も商っていた。いつも眉をしかめたような顔をしている親爺がいた。隣りは下駄屋であった。この家はときどきK紙を取った。