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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
私にはどちらかと云えば無愛想な、満洲人然とした蛯さんの方が気安かった。あずま鮨の次ぎはロ入りということになる。小さい袋路地で、奥には平家建の家が二軒あった。てまえの家がY紙を取っていた。私はこの家の人がなんという名前であったか、またどんな人であったか覚えていない。おそらく勤め人であったろう。漠然とした印象であるが、いい得意であったという感じが残っている。私が配達しはじめてから三月目位によそへ引越したような記憶がある。その後はこの路地の中には殆んど足を踏み入れなかった。長く一つ区域を配達していても、全然勧誘に立ち寄らない家、顔出しをしない家というものがある。誰の区域にもふしぎとなん軒かそういう家が残っている。地理の関係からつい素通りをしてしまったり、またなんとなくとっつきにくくて敬遠してしまったりするのである。私たちのこういう家みしりをする予感は、たいてい的中しているように思われる。その家の門戸を厳重にしている家風が、家の外観にもあらわれていて、われら下級外交員の気持に微妙に反映するのではないかと思う。うまく行きそうな家は、見かけからして既に胸襟を披いている感じなのである。