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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
日大の法科に通学していた。私より半年早くから区域に馴染んでいて手剛い相手であった。私はこの男が配達している間、終始押され気味であった。一体に朝鮮人の笑声には一種の烈しさがあるが、この男の笑声も天外遥かに筒抜けするような調子のやつで、私はその笑声を浴びせられると、いつも気押されてしまって、「俺はとても敵わない。」と思った。長身で動作がきびきびしていて、その配達ぶりは見ていて気持がよかった。彼はまたあの新聞やの特技に長じていた。新聞を指で捌いてキュッキュッと鳴らす。また新聞を小さく折り畳んで膝でポンと叩いて二階の窓に抛り上げる。実に巧みであった。私はと云えば、ぶきっちょで遂にこの技術を身につけることは出来なかった。私はその頃しきりに「麻雀で摸牌するのと新聞を鳴らすのは君子のよくせざるところである。」など口癖にしていたが、ひとえに私の負け惜しみに過ぎない。勧誘の上手下手ということでも、私は彼に負けていたに違いない。私は最初自分には勧誘の仕事は出来るだろうかと心配した。知らない人の家に入って、「今日は。新聞を取って下さい。」と云うのが、とてもきまりが悪かった。