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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
僕の記憶には、父の話振りが、なかなかユウモラスな、上手なものとして残っています。父はまた自ら畳の上に仰向けになって、揃えた足の裏を子供の僕の帯のへんにあて、僕に手足を動かさせては亀の子の真似をさせたりしました。また、自分の背に僕を仰向けに背負って、「千手観音。」だと云って戯れたりしました。子供の僕は父の背で、「千手観音、拝んでおくれ。」などと云ったりしました。僕はこの遊びが好きで、よく父にせがんだものでしたが。もし父が並の躯であったなら、父のこういう為人はもっと外部にあらわれて、広く、暖く、家庭を包んだことでしょう。
父が浄瑠璃を習うようになったのは、十三、四の頃からだといいます。周囲の者が父の為に図り、また父にも少年としての決心があったことでしょう。三十年余もこの道に親しんできたわけになりますが、そういう人として父はいまどんな心でいるのでしょうか。僕も自分の拙さを忘れて、自ら好める道に進もうとしている者です。そういう僕はやはり父のうちに一人の芸人を見たいのです。もしも父が僕の道の先輩であるならば、僕は父の書いたもののうちに、動じない父の心を見出すことも出来得たでしょうに。