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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
学問もなければなんの素養もないということが、私をひどく卑屈にするのである。その上私が大学生を警戒する重大な理由の一つは、彼等が例外なく、ヴァレリイだとかリルケだとかいう、私にはただまぶしいばかりの固有名詞を必ずや発音するに違いないということ、そして私はそれに対してはただ困惑するばかりでどんな相槌も打つことが出来ないという弱身である。私はどんなに気取ってみたところで必ず看破られるにきまっている。それこそ、尨犬の正体見たり小悪魔、ということになり、私は足蹴にされるかも知れない。大学生は鬼門である。これは真っ平御免をしよう。さて、残るところは女性の訪問者ということになる。私は風采揚らず意気また銷沈、それこそ太宰さんの言草ではないが、無才醜貌のなんら取るところなき無愛想者ではあるが、それでも女に負けるとは思わぬ。私は学問こそはないが、かの読書人というものではなかろうか。私の少年時代には、「苦楽」だとか「文芸倶楽部」だとかいう面白い雑誌があって、私はひどく耽読したものだ。そうだ、私は読書人だ、女に負けるとは思わぬ。若しまた武運拙く、万一正体を看破されたにしても、まさか女性は腕力に訴えるような野暮はしまい。