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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
配給所の前には既に隣組の人達が屯していたが、私の姿を見かけるとその群の中から組長さんが歩み出て、私だけに関する不仕合せの事実を告げたのである。「なんですか、小山さんは先渡し量が余分にいっているとかで、今日は配給が無いそうです。」まことに青天の霹靂、入浴中に警報の鳴るのを聞いたような気持で、組長さんの無慙な宣告の下に弁慶はひとたまりもなくべそをかいてしまった。世の中は陥穽に満ちたところだとは、かねて私も多少は心得ているつもりだが、お米の配給機構の中にもかかる苛酷な脅威が存在するとは知らなかった。折角上機嫌で人生に対する肯定的意力を感じていたのに、一寸先は闇とはよく言った、私はこの時世の中に自分程不仕合せな者はないという気がされ、隣組の人達の同情の視線を背にして、しおしおと帰途についた。行きはよいよい帰りはこわい、屠所に牽かれる羊の如き歩みで家路を辿りながら、私は身内になにものかに対する憤怒に似たものの湧出するのを覚えた。自分がなにか理不尽な辱しめでも受けたような気がしてきたのである。私は日頃独身をさほど淋しいことにも思っていないが、こういう際にはなにか八ツ当りの対象があった方が便利な気がする。