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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
三鷹の草屋に留守番するようになって、初めてこれを壁間に掲げたのである。客はいま頻りにそれを眺めている。
「ばかにしけじけと眺めているね。軽蔑するかね。これは友人のなんだ。僕が甲府にいた間留守番をしてもらっていた友人のなんだ。ついそのまま懸けっぱなしにしているけど、軽蔑しちゃいけない。」
「この歌はお子さんが生れた時、お詠みになったのですか?」
「いや、どうして?」
「男の子かと思っていたら、生れてみたら女の子だった、そういう感慨の歌じゃないのですか?」
「君にはへんな勘があるね。そうではないんだが。」
「じゃ、なにかロマンチックな意味合いでもあるのですか?」
「さあね、云わぬが花というものさ。酔ったまぎれに酔筆を揮って友人の笑覧に供したまでなのだが、かくの通り立派に表装してしまったね、三月十日の空襲の際には、伝家の宝物の如く大事に持って逃げたというんだ。」
「まあ、感心な方ですわね。やはり小説をお書きになるのですか?」
「うん、お書きになるんだ。」
「誰方ですの?」
「誰方って、名前を云ってみたところではじまらないよ。お書きになっている代物は未だ一ぺんも陽の目を拝んだことがないんだから。