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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
ひっそり住みなしている感じで、話声が聞えることもない。二人が偕にいるところを見かけることも殆どない。僕は元来物見高い方ではないし、ぶしつけに他人の垣の内を覗くわけではないのだが、便所に入るとつい窓越しに眼に入ってくるのである。縁側の硝子戸が閉まっていて内にカーテンが引かれていることもあるが、大抵いつも独り青年が机に向っている姿が眺められる。そしてそのさまが僕の眼を惹くのである。青年は書物の上に俯いていることが多く、僕に見られていることには気がつかない。僕は便所に入ったとき、青年の姿を見かければ、いつも一寸視線をその顔のうえに止める。僕はなぜその青年の顔が僕の眼を惹くのか、心に問うてみた。一言にして云えば、擦れていないからである。僕はかつて鴎外の「青年」という小説を読んだとき、よくわからなかった。なぜ鴎外はこんな若き燕然とした柔弱児を描いて、而もそれに「青年」という題名をつけたのだろうと不審に堪えなかった。最近読み返して眼のあく思いをした。この作品の冒頭の部分に次のような一行がある。「ませた、おちゃっぴいな小女の目に映じたのは、色の白い、卵から孵ったばかりの雛のような目をしている青年である。