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おちぼひろい
落穂拾い・犬の生活
小山 清
小山清『落穂拾い・犬の生活』。同一底本的分册已合并为一书。收入:落穂拾い、犬の生活、夕張の宿、生い立ちの記、桜林、西隣塾記、聖アンデルセン、前途なお、早春、その人、遁走、朴歯の下駄、安い頭、わが師への書、メフィスト。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 页
芳三は仕事から帰ってきてから、よく町の麻雀屋へ出かけた。金を賭けてやるのである。おすぎがトシを連れて風呂の帰りに麻雀屋の前を通りかかって覗くことがあると、
「なんだ、迎えに来たのか? すぐ終るから待ってろ。」
と、怒鳴るように云って、やがて出てくる。歩き出してから、
「どうでした?」
と訊くと、
「負けた。」
と、云って闊達に笑う。おすぎにおぶさっているトシの顔を覗き込んで、指でかるくその頬をはじいたりする。ふいに道ばたに屈み込むので、どうしたのかと思うと、そこに咲いている名もない花を摘んでトシの掌に握らせるのである。芳三が負けた結果は直接生活にひびいてくる。おすぎは困ったと思いながら、それでいて芳三の顔を見ていると、何か心丈夫な気がしてくるのであった。見かけはただ荒っぽいばかりの人であったが、そのやさしい実意をおすぎはいちども疑ったことはなかった。家計は苦しかったが、おすぎには楽しい生活であった。順吉を見ていると、まるきり違った人柄のようでいてどこか芳三に似てるようなところがある。そう云えば、芳三があけすけであったように順吉にも自分の過去を飾るようなところがない。